40年ひきこもっていた祖父の話

 

 

警察官を半年でクビになった後、
私はひきこもりになった。

 

疲れてボロボロだったっていうこともあるけど、

やっぱり一番の理由は・・・・・・・・

 

「なにすりゃいいかわからん!」だ。

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(本物の陰キャ)

 

 なにせ今までの人生はぜーんぶ!!!
『警察官になるため』だけに生きてきた。

・・・だから警察官をクビになってしまった今、
どう生きていけばいいのかわからなかった。

 

1日中!!!布団で丸くなって!!シクシク泣いて!!!

夜も眠れなくて!!失神するように眠る虚しい毎日!!!


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(うわああああああああああ・・・・・)



・・・・そんな時、父が部屋にやってきた。



「えっ!?父さん!!!?」


私はビックリして布団から飛び起きた!!!!!

 

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別に驚くようなことは何もないように見えるだろう。


『落ち込んだ我が子を励ましにやってきた優しい父親』

よくある一般的な家族の一般的な風景である。

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 (アッハハハアッハハハハ)

 

だけどウチの家庭は違う!!!!

 

雇われ経営者をしていた父は仕事が忙しかったせいか?

 

私が幼い頃からほとんど家に帰らず。

 

・・・・・生まれてこの方、
父と会ったのは数えるほどしかなかった。

 

だからちゃんと会話を交わしたことなんて

今日の今日までなかったのだ!!!!!!

 

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(あの・・・蒸発気味の父が・・・!?)

 

すると父は私に向かってこう話はじめた。

「おまえはじーちゃんそっくりだな」と。

 

こうして私と父は、生まれて初めて

面と向かい合って会話を始めた。



まず、私の家系は少し複雑で、

「じーちゃん」が三人いた。

(戦後という時代のせいで)

 

その中の一人の・・・じーちゃんは、

若い頃「演奏家」をしていたらしい。

 

楽器片手に日本全国を渡り歩き、

音楽で飯を食っていこうとしてたとか。

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(そりゃ凄い話だ・・・・)

 

だけどじーちゃんは長男で、跡取り息子だったので、

結局、家に呼び出され『家督』を継ぐことになった。

 

当時、私の実家は『クソ田舎の地主』で、

それなりの資産を持ち合わせていたようだ。

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(わが一族は○○城主の末裔で~みたいな話してたわ)

 

とにかく、じいちゃんは演奏家の道を諦め、

地元の『楽器工場』に就職をした。

 

楽器職人になるためだ。

 

演奏家としての人生はもう終わり。


だけど大好きな音楽にこれから少しでも

関わっていたい、と思ったんだろう。

 

なんとも不憫な話なんだけど・・・・
じいちゃんはとても聡明な人だった。

 

なんと・・・若くして一流の楽器職人になり、

会社を代表して『天皇陛下』に自分が造った
『楽器を献上』することにまでなったのだ!!!!


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(そりゃすげーや)

 

この名誉を一族の誰もがほめたたえた。

「さすがだ!!」と「一族の誇りだ!!」と

 

・・・・まぁ・・だけど
人生そう美味い話はない・・・

その名誉がじーちゃんの人生を終わらせた。

 

結局・・・・会社の先輩や同僚たちは、

じーちゃんを妬み憎むようになり、


じーちゃんは社内で『イジメ』
受けるようになってしまったのだ。

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(出る杭は打たれる)



・・・・とにかく、じーちゃんはぶっ壊れた。

 

もう楽器を造れなくなり、会社を辞め。

家に引きこもるようになってしまった。

 

それも約40年。40年だ!!
死ぬまでずーっと引きこもっていたらしい。

 

私もじいちゃんが引きこもっていたことは知っていた。

だけどそれまでの経緯や理由は全く知らなかった。



じいちゃんは死ぬまで家に引きこもって死んだのだ。

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(・・・・・・・・)



当然、優秀だったじーちゃんを失った一族は分裂。

骨肉の遺産争いが行われたあとは骨も残らなかった。

 

その後、廃人になったじーちゃんはいつも
縁側に座ってボーッと庭園を眺めながら

 


自分で造った「手製のハーモニカ」で、
「ふるさと」という曲が吹いていたそうだ。

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(ウサギ美味しい)

 

まっ・・・・・・父がしてくれた、

じいちゃんの話はそんな感じだ。

 

 

じいちゃんは私が幼い頃に死んだから。

ほとんど覚えてることない。

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ただうっすらと・・・・・・

 

ときどき縁側で抱っこしてくれて

一緒に日向ぼっこした記憶はある

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大きくなると近所のじーさんばーさんから、

「おじいさんにそっくりね!!」

言われることがよくあった。

 

「どんな人だったんですか?」と尋ねると

「穏やかで優しい人だったよ」と言っていた。

 

そういう人間だから人間の妬みや恨みに

飲み込まれてしまったんだろうな・・・

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・で

 

 

父は引きこもりになった私に説教はしなかった。

ただ、このじーちゃんの話だけをして去っていった。

 

・・・だけど言いたいことは十分伝わった。

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わかったよ・・・・・

私まで、ひきこもりになっちゃったら

きっとじーちゃんも悲しむもんな・・

 

こうして私は・・・・もう一度、
人生をやり直すことにした。

 

18歳。警察官をクビになって数か月。


もう冬になる頃だった。